「木乃婦」。
三代続く割烹で、三代目が意欲的に料理を変えて、面白いと聞く。
前菜、
中トロ握り。銀杏、蛸の子、川海老、酢生姜角切り、衣かつぎ、梅ゼリーでくるんだ青梅。
お造り
ほんのり甘さを漂わせるあこう鯛、ねっとりと甘く広がるイセエビ。あこうに点在するは、梅肉。
椀物
椀物代わりだろう、鱧と早松茸のしゃぶしゃぶ。紙鍋で。
松茸の茎が細く細く揃えられているのが面白い。湯葉、水菜、鱧の脂、出し、松茸の香りと食感。
朱塗りのお重の蓋を取ると氷が敷き詰められ、中央に雲丹の箱が鎮座している。
上には海水ゼリーそれに薄く切られたアワビ。
アワビで雲丹を巻いて食べれば、誠によろし。
少量散らされた微塵の大徳寺納豆の塩気が両者を引き立てる。
真打。
フカヒレ鍋。
寄り添うのは胡麻豆腐。胡麻の含有量が少ない、ふわふわとした胡麻豆腐で、それがふかひれと見事に合う。
面白い。
鍋のコクが白ワインと合う。
最後は肉ご飯。
「佐々木」といい、人気の割烹は、緩急はあまりつけずに、おいしいもんを惜しげもなく出す。というようだ。
この流れは「一よし」辺りからなのだろうか。
デザートは、夕張メロンとグレープフルーツゼリー、さくらんぼにココナッツアイス。
料理は、15000円。
夜は、「千ひろ」。四度目のお伺い。
今回は友人以外にお客様合わせて六名。
突き出し
じゅんさい、うに、ゴールデンキウイ
秋のホタテと巨峰の酢の物同様「千ひろ」らしい一品。
山と里、海の夏を出会わせた一皿。
前菜
蛸の慈愛が舌に沁みる「大根と蛸の煮もの」
黄味酢の塩梅がぴたりと決まった「アスパラ黄味酢和え」
こちらを挑発するようなクセが心憎い、「鱧肝」の煮もの。
お造り
右が「千花」ゆずり、塩昆布を添えた明石鯛のお造り。
左が生鱧と浮き袋。
椀
湯葉しんじょうと焼き麩、へぎ柚子。
この店で椀をいただくとき、いつもその宇宙に飲み込まれる。
圧倒的なのではない。
最初は優しく、繊細で決め細やかに、にじり寄って、飲み終わる頃にクライマックスがやってくる。
出し文化の、一つの洗練の極みがある。
焼きもの
今回の主役。なんと見事な厚さの鱧。
香ばしさ、気高さ、潜む獣らしさ。どうだとばかり。
湯葉汁
まろやかな甘み。鱧の脂と強さを洗い流して、次の皿へと向かう準備が整う。
鮎
香魚なり。
焼茄子
名物。ムースのごとき滑らかさ、舌に乗る甘み。
酢の物
はもと胡瓜、ルビーグレープフルーツ。
三者がよく合うこと。
ご飯
鮎ご飯。
鮎が出すぎず、引きすぎず。ごはんと素直に馴染んでいる。
計算されつくした調和。
最後は、オレンジとリンゴのジュース。これもこの店らしい潔さ。香り高き終い。
料理15000円。