敦賀「千束そば]

とんかつと蕎麦

食べ歩き ,

今まで蕎麦は1万食以上食べただろう。
しかしせいろの上にカツが乗っている光景は、初めて見た。
おろしそばだけを食べた帰ろうと入ったのだが、他の客が食べているのを見てしまったのである。
「カツと冷たい蕎麦が合うわけ無いだろ、やめとけ」
頭の中で囁くやつはいたが、気がつくと頼んでいた。
蕎麦の上に薄かつが乗っている。
傍らにはたっぷりおろしが入ったそばつゆが控えている。
まずは蕎麦をたぐる。
ずるるるっ。
次にカツを頬ぼる。
カリカリリ。
はっきり言って整合はしない。
整合はしないが、ずるるるっと、カリカリリの対比が面白い。
ずるるるっ、カリカリリ。
ずるるるっ、カリカリリ。
ずるるるっ、カリカリリ。
細かいドラムロールとギターカッティングの重なりのような、軽快さがある。
このカツにソースがかかっていたら、皿に合わなくなるだろう。
しかし何も味付けのない、素カツというのがいい。
ちょっとわびしい感じが、そばに寄り添う。
でも途中で、そばつゆにドブンとつけてみた。
醤油味と旨味が加わって、カツは少しだけ背伸びをした。
でもそれより、カツの油と衣が溶け込んで、少し下品になったそばつゆが愛おしかった。
敦賀「千束そば」にて。