カルデラ湖である。
白い外輪山には、妖艶な香りを放つ塵が降り積もり、湖は焦げ茶色に輝く。
まず白い山だけ食べてみよう。
ミルクのリゾットである。
乳と米の淡い甘味を滲ませて、それはとても穏やかに息をする、
湖は牛から抽出したスーゴだと言う。
深い滋味を満々と湛えたスーゴとリゾット、トリュフを合わせる。
するとどうだろう。
途端にトリュフの香りが爆発した。
鼻腔に香りが粘り付き、コーフンさせる。
「修行先で習ったリゾットです。コモ湖の南、MOMOという小さな町で70年やられているリストランテでした。パスタの修行でイタリアに行ったのですが、この店は北の伝統を守って、パスタは出さない。一年間働きましたが、賄いはいつも炊いた米にバターかチーズをかけたものでした」。
池田光寿シェフはそう言って、優しい目で微笑まれた。
リゾットを作るのが楽しくてしょうがないという目である。
「毎日スーゴをとっていますが、その日その日で変わっていきます」。
「じゃあこのリゾットは、季節で楽しめますね。1月の脂が乗った濃密なスーゴと最盛期のトリュフとの出会いを想像しました」。
そういうと、物腰の柔らかいマダムが、「冬もぜひいらしてください」と言われた。
本郷三丁目「canade」
「Macalle(マカッレ)風リゾットサマートリュフ」