東京とんかつ会議 第162回 南阿佐ヶ谷「成蔵」TOKYO -X特ロースかつ定食(4980円)

東京とんかつ会議 第162回 南阿佐ヶ谷「成蔵」TOKYO -X特ロースかつ定食(4980円)
肉3、衣3、油3、キャベツ3、ソース3、御飯3、お新香2、味噌汁3、特記 エビフライ 計24点(各項目3点満点、特記項目含め25点満点)
「成蔵」の衣は生きている。
よくよく見れば、細い一本一本が天に向かって立ち上がり、「さあ食べて」と叫んでいる。
噛めば、「サクサクサクッ」と、軽やかな音が響き渡る。
その音は、隣の人が食べていても、聞こえてくる。
店内に「サクサクサクッ」が鳴り響き、心が軽くなっていく。
こんなとんかつは、おそらく「成蔵」だけであろう。
移転後も「成蔵」健在である。肉も、特有の軽やかな衣も、健在である。
豚肉は、以前の霧降高原豚から変え、雪室熟成豚とTOKYO-Xに絞られた。
雪室熟成豚は、澄んだ味わいで、軽やかな衣と相性が良く、今回のテーマとなったTOKYO-Xは味が濃く、噛む喜びがある。
歯に触れるだけで舞い散るような衣と、濃い味わいで、噛む喜びがある肉との対照的な存在が、興奮を呼ぶ。
TOKYO-Xのとんかつは、肉感的な女性が華奢な麻のドレスを纏っているかのような、色気がある。
衣が以前より、さらに軽やかさを増したような気がしたので、聞いてみた。
「細かい衣だけを、振り落とすようになりました」と、店主三谷成蔵さんは言う。
結果、余分な細かい衣はつかず、中粗の衣だけがふわりとまとうので、衣の軽やかさが、より高まったのだろう。
またとんかつを投入する油の温度を、以前より低くした結果、より優しく豚肉に火が入っていく。
噛めば、甘い香りが立って、肉汁がじっとりと舌に広がる。
引き締まった脂は、甘い香りを広げながら、さらりと舌から消えていく。
これぞとんかつの醍醐味である。
キャベツ、ソース、ご飯、味噌汁、お新香の脇役陣も、申し分ない。
さらにサイドオーダーできる、鳥ささみカツと海老フライに、比類なきうまさがある。
塩水につけたというささみカツは、ふっくらと膨らんで優しく、柔らかな味わいの肉汁が、存分に楽しめる。
一方の海老フライは、衣が、どこまでも優しく、海老を思いやり、ぴったりと密着しているが、海老に触れていないような感覚がある。
衣で締め付けることなく、柔らかにかぶさっている。
きっと海老は、衣に包まれたことも知らないのだろう。
そう思う軽やかさで、噛めばサクッと音が立って衣が割れ、海老の甘い香りを含んだ熱い空気が口に漏れる。
まだ海老を噛んでいないのに、もうこれだけで目が細くなる。
そして海老に歯を入れれば、揚げられているのに、蒸されたような品のある食感で、淡い甘みが流れ出る。
なにかこう、いけないものを噛んでしまったような、禁断の色気がそこにある。
こんな衣で揚げられる海老は、さぞかし幸せに違いない。
山本氏
肉3衣3油3キャベツ3ソース3御飯3味噌汁2お新香2特記エビフライ1合計23点】
河田氏
肉3、衣3、油3、キャベツ3、ソース3、御飯3、お新香2、味噌汁3、特記 エビフライ 計24点