<バトンをつなぐ>
「サカエヤ」の新保さんと「サスエ前田」の前田さんの話の中で、よく「バトン」という言葉が出てくる。
「生産者や漁師から受け取ったバトンを料理人につないでいく」。
といった話し方をされる。
以前前田さんは言われた。
「リオ五輪の陸上リレーを見ていて気づいたのです。一人一人はメダルに届かない能力だったとしても、うまくバトンをつなぐことによってメダルを獲れるということに」。
生産者、精肉店や魚屋、そして料理人。
違いが切磋琢磨し合いながらベストを目指すことによってしか生まれない価値がある。
バトンを受け渡し受け取る人たちは、みなそのことを心に刻んでいる。
アジやウナギを天ぷらにするなんて、誰が考えただろうが。
今までやられていないということは、無理があったということである。
それを志村さんは見事に昇華させた。
しかしそれには、志村さん前田さん、漁師との意見交換が散々なされて結実したものである。
いやまだ結実していないかもしれない。
「マッキーさん、今アジの天ぷらさらに良くなってやばいですよ」と、前田さんがいうように、三者が常に現状に満足せずに、よく未来を目指している。
去年ウナギの天ぷらを食べたが、それを完成するために目ださんと志村さんが試行錯誤を重ね7年かかったという。
今まで食べたことないこのような料理もさることながら、食べたことのある料理も未知の領域に踏み込んでいく。
緒方さんが阿蘇赤牛を使って焼いたハンバーグは、肉の香りに満ち満ちて、ハンバーグは、香りを楽しむ料理だということを教えてくれる。
野暮ったいと思割われているアジフライの色気もまた然りである。
3/末、京都「洋食おがた」で行われた新保さんが整えた阿蘇赤牛と前田さんが仕立てた魚を使った料理会は、まさに洋食という料理の輝かしい可能性に満ちたいた。
しかし忘れてはいけない。
生産者から新保さんや前田さん、そして料理人に手渡されたバトンは、我々食べる側に渡されていることを。
〈てっばい》
スミイカ とコリコリ(気管)、巻貝 、うど、わけぎ 、木の芽
食感の妙、春の香り添えて。心憎い。
〈軽く炙って〉
うっかりカサゴ、あか牛タン 茗荷、山わさび、芽シソ、塩、レモン、オリーブオイル、胡麻油
深海にいるカサゴの身がしまっている。タンの食感と合う。
ホースラディッシュのアクセントが見事。
〈ローストビーフ〉
あか牛うちひら ローストビーフ、京都塚原朝堀筍、木の芽
いつまでも噛んでいたい。味の余韻が長い。
〈ミノ串〉
あか牛ミノフライ 辛子
中から脂の甘みが湧き出てくる。その牛の脂の甘みと揚げ油の甘い香りが響き合う。笑うしかない。。
〈タチウオ〉
炙り。フリット
炙りの筋肉を、ぐぐっと噛み締める喜びは、前田さんの魚しかない。
魚なのに、食らっているぞおと叫びたくなる勇猛さが味に歯ごたえにある。
そしてフリットの衣とのコントラストに、腰砕ける。
〈尻丸海老スープ〉
尻丸海老 ホルモン、ネギ、生姜、七味、レモン
ホルモンがきれいで海老ビスクの深く丸い滋味と調和する。
うまみが行きすぎていないビスクの計算が素晴らしい。
〈アジフライ〉辛子、塩
変わらず素晴らしい、唸り唸る。アジレアに揚げてフライ
本来揚げて一番気になる血合の味が主役となって、きれいかつ艶かしい味わいとなる。
〈金目鯛〉
唐揚げ。おろしポン酢すだち
深海系で離水性が高い金目鯛なのに、保水性がすごい。
優しいあまみが。しっとりと膨らまれて舌に流れていく。
〈ヒレカツサンド〉
あか牛ヒレカツ 岡山吉田牧場バター。
「噛んではいけない」といわれているような禁断野味わいと食感。
ミルクと草の香り
柔らかいのだがただ柔らかいのではない。
しなやかな筋肉をそのまま生かし揚げられている。
味が伸びやか。
誰にも邪魔されない自然の味がある。
〈サラダ〉
サラダに、レバーとハツ炙り、、ポン酢
レバーは、甘みがゆるゆると舌と鼻を誘っていく。
ゆっくりと口説かれている感じ。
〈あか牛リブロースロースステーキ〉
リブロース 山わさび グラスビアンド イタリアンパセリ。塩
噛む、噛む。
鼻息を荒くし、唸り、再び噛む噛む。
草の香りと大地の響きがある。
口から消えても余震が続く。
〈アンクルート〉
サワラ、香草、マッシュルーム、春キャベツ、サワラムース、パイ、バターソース、トースト
鰆もさることながら、その滋味が染みたパイの内側のうまいこと!
〈ハンバーグ〉
あか牛、サドルバック デミグラス、じゃがいもピュレ
黒胡椒、パセリ
香りに酔うハンバーグ。
〈〆ご飯〉
ホルモンナポリタン。オムライス