東池袋から歩くこと10分。
細いビルの螺旋外階段を3階まで登るとその店はある。
「沙漠の月」変わった名前だなあ。
ギュウギュウ詰でようやく6名が座れる小さな店には、中国人のお母さんが一人。
「さあ今夜は何食べる?」と、聞いてくる。
「葛きりはどうする? ピーマンや他の野菜、ジャガイモもできるよ」。
「じゃがいも!」
「珍しい。この店で初めてジャガイモと言った人」。
「そして餃子もね」。
「はい。今日は大根と豚の餃子ね」。
「それからトマト卵炒め」。
「はい麻婆豆腐もできるよ。たべる?」
「食べる食べる!」
「あとは麺ね。わかった」。
お母さん一人で手際よく次々と作っていく。
まずは鹵煮を食べ、ジャガイモとくずきり炒めで大笑い。
そして餃子は、生地の塊を取り出し、次々と皮を作り包んでいく。
ふっくら肉汁と大根の甘みたっぷり水餃子、いとおいし。
お次はトマト卵炒めと麻婆豆腐だが、わざと全部食べずに残して置く。
麺のためである。
またお母さん、生地の塊を取り出し、手で伸ばしたり、よったり、伸すしたりして様々な面を作っていく。
魔術のごとき手際である。
まずは細い切面を先ほどのトマト卵炒めと麻婆豆腐にぶち込んで次のひもかわうどん風ピャンピャン麺は青菜と辛いタレの油泼で味付けして油泼麺、そして最後の爆竹麺は豆板醤ベースで野菜炒め煮と、麺攻撃が止まらない。
これを六人でわしわしと食べるんだから、たのしいったらありゃしない。