「鮭ください」。
「しゃけふたつ」。
「まだ鮭はありますか?」
「なんにしますか?」「鮭」。
この店にいる間、10数人が入ってきたが、全員鮭の塩焼きを頼んでいる。
おそらく1日40鮭は出ているのではないか。
ひとくちカツとコロッケのセットや煮魚、ぶりの柚子胡椒焼きもあるのに、誰も頼まない。
僕も鮭のつもりで入ったが、煮魚が不憫になって、「いわしの梅煮」を頼んだ。
だが鮭という当初の欲望も捨てきれず、「鮭もください」と、口走っていた。
塩鮭とイワシ梅煮という暴挙であるが、たまに頼む人もいるのか、店を一人で切り盛りする70数歳のお母さんは、すんなり受けてくれた。
ここの鮭は分厚い。
普通の店の1.5倍はあろう。
初めてお目にかかるイワシの梅煮も、やはり堂々たる太さのイワシ二匹であった。
しかし梅煮は淡い味付けで、酒も甘塩だから、2品といえど軽くいける。
しかも煮魚には、大根と人参の煮物が添えられていたのは、嬉しかった。
これで千五百円。
よし今度は、一口カツとグラタンコロッケを頼んでみよう。