静かな静かなうまみが舌を包み込んだ

食べ歩き ,

静かな静かなうまみが舌を包み込んだ。
野芹、甘草、クレソンなど6種の山菜を合わせた「山菜のスペッツレ」は、一噛みごとに山の精気が口を吹き抜ける。
その中で素朴なスペッツレが、ほのかな甘みをにじませる。
はあ~とため息が漏れる。
朴訥なうまさが、体を清らかにする。
決して裕福ではない山の民の料理が醸す、脆弱な滋味に、心が静かになる。
それは普段贅沢をしている人間のおごりかもしれない。
しかしその静けさは、確実に謙虚と感謝を生んで、人間の芯を素直にさせる。
「ダ・オルモ」の料理は雄弁ではないが、そんな料理だ。
「コブ鯛のラサ」もまた、静かにさせる。
米粒大のパスタであるラサに、ドライトマトの酸味とうまみ、コブ鯛の甘みが絡んで、ゆっくりと笑わせる。
うま味が余計でない。
ぎりぎりに計算された慎ましやかなうま味が、パスタと自然に抱き合っている。
おいしいけど、大声で叫びたくない。
そっと耳元で、「おいしいね」と囁きたい。