鉄板焼き専門店「プランチャ」の楽しさ

食べ歩き ,

バルセロナのサン・ジョゼップ市場で、初めて鉄板焼き専門店「プランチャ」に出会った。
目の前に置かれた、魚介類や茸、野菜などを指差して焼いてもらう。
実に簡単なれど、次々に頼んでしまい。次第にコーフンが収まらなくなる、狂喜乱舞の楽しさがあった。
すぐ思ったのは、日本にもこんな店ができればどんなに生活が潤うかということだった。
スリオラの本多さんに虎ノ門横丁の出店をお願いした時、ふとプランチャのことを思い出して、相談したら、彼はすぐに乗ってくれた。
しかし、完成した本多流ブランチャは、想像を遥かに超えている。
目の前の鉄板で、魚介や野菜を短時間で加熱し、熱々を食べるのは、変わらない。
だがそれぞれの食材を活かすソースや香りが、巧みに添えられていて、その味わいの広がりと変化にコーフンする。
締めのパエリャもフィデウアも、バスクチーズケーキもトリハも、ふたひねりほどされていて、心を打つ。
イカは軽く燻製にし、イカスミソースを敷く。
ソースをたっぷりからめて食べれば、軽い燻製香とソースの深み、イカの甘みが響き合って、笑いが溢れる。
赤海老は、味噌がたっぷりとこぼれ、そいつをエビをつけて食べ、すかさずワインを飲む。
濃密なサルモレホ(ガスパチョ)の旨味。
甘みが深い、ピッキージョの煮込み。
そしてイベリコ豚のプルマの躍動感のある味わいと特製ニョラのマーマレードの柔らかな甘みの響きあい。
フィデウアは、よくある重さがなく、うま味を吸ったパスタがパリパリと軽やかで、これ一人でも食べられちゃうぞ。
そして最後のバスクチースケーキとトリハも、一口食べた瞬間に甘い夢に落ちて逝く。
スペインのプランチャは全部行ったわけではないが、間違いなくどこにもない、世界一のプランチャである。
それが四人で、カバを一杯ずつのみ、ワインを二本飲み、一人一万円強というのだからこんな幸せなことはない。
もう、毎晩きちゃうぞ。
虎ノ門横丁にて