専門家によると、昭和初期に栽培されていた野菜と現在のものでは、栄養価が激減しているという。
最たるものは人参で、五分一、80%も減っているらしい。
日本の種苗会社は、農家が早く、楽に、効率よく育てられるよう品種改良してきた。
その恩恵に我々は授かり、資本主義の世界ではいたしかないと思う。
だがそうやって、甘やかされ、過保護に改良された野菜は、本来の力を失っていく。
アブラナ科の野菜を、日本の種苗会社のものと、原産地の北アフリカや南欧州のものを蒔くと、一目瞭然だという。
日本のそれは、一斉に100%芽を出す。
原産地の種による発芽は、70%くらいでバラバラになるという。
だが日本の種は、育ってから油虫がつく。
一方原産地の種は、一切虫がつかないのだという。
油虫に食べられないよう自己防衛する、本来の力があるのだ。
それが味になり、香りになり、養分となる。
そんな野菜を育てている、栃木の海老原ファームの野菜を使った、天ぷらの会を昨日開いた。
スーパーで売っている胡瓜と茄子を食べ比べ、その違いに驚いてもらった上に、天ぷらにした。
(4枚目のきゅうりの写真を見て欲しい。どちらがスーパーかな?)
千両茄子、ブルーム胡瓜、人参(なんと芯が細いのだろう)、赤オクラ、玉ねぎ、アンデスレッド、ノーザンルビー、男爵、坊ちゃん南瓜が、揚げられる。
みな、ただ味が濃く、甘みがあるだけでなく、品がある。
食べた後の余韻が長い。
皆さんが一番驚いたのは、胡瓜だった。
ばしゅっ。
噛んだ瞬間から水分が弾け、噛んでいけば、優しい甘みが滲み出る。
「野菜を育てているのではありません。野菜のシモベとなって、それぞれの野菜がどう育ちたいか聞いて、見て、従っているだけです」。
海老原さんは、日焼けした顔に穏やかな笑顔を浮かべて、静かに語った。
新宿「つな八つのはず庵」