六本木「ブリアンツァ」

超一流の無茶振られ体質。

食べ歩き ,

また無茶振りをした。
奥野シェフがM体質でも、僕がS体質でもないが、また無茶振りをしてしまった。
今回は、一月だからという理由で、黒豆を使った料理ときんとん、七草粥を作ってというワガママに加えて、もう一つ無茶振りをした。
いつもその無茶振りを受け止め、こちらの予想を超えて、いい意味で裏切ったおいしさを産む彼のセンスに、驚く。
 
無茶振り1
「黒豆が食べたい。黒豆入りリッボリータを作って」。
イタリアの黒豆を入れて作られたそれは、地平線の彼方まで優しい。
焼いて水分を飛ばしたパンが、スープの滋養を吸い込んで、てれんと舌の上で身を崩した瞬間、幸せを感じるのは、僕だけではあるまい。
しかも二種類のリッボリータである
ポモドーロのリッボリータのおいしいこと。
 
無茶振り2
「七草粥 七草のリゾット作って」。
その注文に対してシェフは、10年熟成パルミジャーノレッジャーノを、一個買ってしまった。
今でもイタリアでは、このチーズは銀行で担保となる。
一個およそ40kg。
その半分に穴を掘り、七草粥のリゾットを入れてチーズを掻き取って合わせる。
セリとハコベラが多い七草粥は、香り高く、清廉な香気が鼻腔を洗う。
そこへチーズのコクが膨らんで、どこにもない七草粥、いや七草のリゾットが誕生したのであった。
 
無茶振り3
「ドルチェでいいから、きんとん作って」
この無茶振りが一番困ったらしい。
ただきんとんを作ればいいのではない。
きんとんの味がしつつ、イタリア料理になるのはどうするか?
登場したのは、蜂蜜とローズマリーを入れたフランス栗のペーストのソース、と栗のペーストで作ったプリンのコンビである。
ソースには、きな粉とオリーブオイル、ズッパを混ぜたという。
日本のきんとん同様、ゲル状と固形ではないか。
そして食べて驚いた。
ソースとプリンを別々に食べると、イタリアンのドルチェののだが、一緒に食べるとまさしくきんとんではないか!
ローズマリーが醸し出す酸味が、クチナシのそれに似て、心憎い。
 
全ての料理ともう一つの無茶振りは、別コラムを参照してください