一面の雪景色に花が一輪咲いていた。

日記 ,

蓋を開けると、一面の雪景色に花が一輪咲いていた。
京人参で作られた梅の花が、健気に生命の喜びを発している。
傍らには、古木に見立てた堀川牛蒡が横たわり、よく見れば粉雪がちらちらと舞っていた。
寒シジミの汁の中には、湯がきたての聖護院蕪が沈んでいる。
一口すすった。
ああ、シジミの汁である。
だが今まで知ったるシジミの汁とは違う。
シジミの純なる滋味だけがすうっと出ていて、雑味も嫌味もない。
微塵もない。
きれいにきれいに澄んでいる。
懸命に生きてきたしじみの養分が、体の細胞と同化して、行き渡っていく。
はあ〜。
僕にできることといえば、充足のため息をつくことだけである。
聞けば、少し出汁を足してやることによって、嫌味が消えるのだという。
だが出汁の味は感じない。
おそらくその塩梅は、1CC狂ってもダメなのだろう。
そして湯がきたての蕪は、たくましい香りと穏やかな甘みを宿し、舌の上でゆっくりと崩れていった。
椀の中に心がある。
物語がある。
そして日本がある。

「大夢」の1月の料理はこちらから。