銀座「からく」

甘く、青い風。

食べ歩き ,

青柳の握りには、いなせな味がある。
噛めば、青臭さと甘さが入り混じった香りが忍びでて、その奥に旨味が潜んでいる。
それが酢飯の香りと相まって、くっと喉が鳴る。
食べた瞬間に、爽やかながら色気を隠した風が吹く気配があって、それがいなせだと思うゆえんである。
それなのにもうタネとして扱う寿司屋は、少なくなってしまった。
漁獲のほとんどが東京湾だというが、前ほど大きいものがなくなってしまったせいもあろう。
漁獲高が減っているようだが、小柱は相変わらずあるのに何故だろう。
おそらく数が減って、高騰している割には、ウケないせいもあるかもしれない。
昨夜は見つけて、お願いした。
口の中を風が吹き抜ける。
赤貝の鉄分や鳥貝の甘い香りとは違うこの風が、たまらなく好きだ。