無茶振り第二弾は、ひな祭りをかけて、蛤のズッパだった。
奥野シェフは柔軟そうに見えて、筋金入りの負けず嫌いである、
どこがズッパなの?
どこに蛤がいるの?
という皿が出てきたのである。
上の生ハムをどけると、蛤が現れた。
下にはホワイトアスパラガスとソースに、ソースを染み込ませたパンが置かれている。
そうズッパとは、決して日本人が考えるスープではない。
硬くなったパンを液体につけてグジュグジュにして、飲むというより「食べる」料理である。
中世時代にバンは、一週間に一回ほどしか焼かないので、次第に硬くなって歯が立たなくなる。
それをクズ野菜を煮た汁につけてふやかし食べていた知恵だという。
さて目の前の料理、蛤もアスパラもいいが,主役はパンかもしれない。
ふにゃふにゃになったバンを食べると、名前ハムと蛤のミネラルが溶け込んだ深い滋養が、舌を浸していく。
その瞬間、「うまいなあ」と、呟かせるのだった。
神谷町「デプスブリアンツァ」にて