涙のカブ。 旬の歳時記。

食べ歩き ,

元赤坂辻留で「みぞれ汁」を飲み、「うっ」と声を漏らしたまま、無言になった。

おろしたかぶとダシを半々にあわせ、四方焼き豆腐と芹を種とし、七味をふった椀。かぶの甘味と香りがゆるゆる広がって、幸せが満ちていく。

だしが出すぎず、かぶの優しさを静かに支えている。

七味も極々微かに、かぶを引き立てる。

「ありがとう」。

慈愛の言葉が、一口とすするたびに湧いてくる。

最後の一滴を飲み干した時、涙がこぼれた。

 

旬は3~5と10~11の二回