用賀「スポルカチョーネ」移転

正しきコトレッタアラミラネーズ

食べ歩き ,

「肉料理は食べられますか?」
23歳の女性に尋ねられた。
若いのに、ワインも料理のことも詳しい。
「なぜそんなに詳しいの?」と聞くと、「飲むのも食べるのも大好きなんです」と、笑われた。
さて肉料理である。
「肉料理はなにがあるの?」と聞けば
「牛のタリアータや子羊のソテーもいいですし、鶏ももおいしいですよ。モモのローストもいいですし、ここには書いてないんですが胸肉をしっとり焼いたのもおいしいです」。
ああ胸肉に惹かれる。その時突然閃いたかように
「あ、骨つき豚肉を揚げたのもありますよ」と、言う。
「どれも良さそうだな、じゃあ君の一番好きなのはどれ?」と、聞いてみた。
「うーーん」。
彼女は空を見つめながらしばし悩んでいる。そして
「豚肉です」。
そういって子供のような笑顔を浮かべた。
「それではコトレッタをお願いします」。
「はい骨つき豚肉です」と運ばれた料理は、地響きがするような堂々たる大きさである。
正しきコトレッタアラミラネーズである。
とんかつである。
「肉にかぶりつく」。そう表現したくなる肉はいい。
バターのコクと酢の酸味を聞かせた肉は、歯を舌を鼻を喜ばせながら、喉に落ちていく。
バターのコクをまとった豚肉の甘みが、食欲を掻き立てる。
「いかがですか?」と、シェフが奥から出て来て聞いた。
「いいですねえ。バターたっぷりで揚げられたカツはたまりません。あと白ワインヴィネガーね」。
そう言って、食べる様子を伺うサービスの女性にウィンクした。
すると彼女は、自分の子供を褒められたかのような、誇らしげな顔をして笑った。
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