某月某日

日記 ,

某月某日、その宴はひっそりと行われた。
場所は都心のマンションの一室である。
限られたメンバーが、手に手にワインを持って集結する。
キッチンには、イタリアンの鵜野シェフが立っていた。
気の向くまま、趣くまま、素材の声を聞いて作るという。
イタリアンでも和食でもなく、シンプルに味を引き出していくという。
枝豆豆腐とコンソメジュレ、雲丹とキャビアの椀から始まった。
なにより豆腐が豆の甘い香りに満ちていておいしい。そこへコンソメの滋味、雲丹の甘み、キャビアの練れた塩気が参加していく。
次は大分の鯛を行かったお造り。
寝かした鯛は、塩もみし、カボスを少しかけてあるだけである。
食べるとどうだろう。優しい甘みがじんわりとにじみ出て、口にねっとり広がっていく。
「はあ」。思わずため息が漏れた。
醤油にもワサビにも邪魔されない命の高みが、充足のため息をつかせる。
そこへゲベルツを流し込めば、カボスとワインに含まれた柑橘香、鯛の甘みとワインの甘みが抱き合って、幸せの時を運んでくる。
辛子と甘味と滑らかさが水ナスを生かす白味噌。
平戸牛もも肉は真空で加熱され、噛む喜びを爆発させる。そこに合わせた青唐辛子、香菜、茗荷、ネギなどが心憎い。
さらにはウニを巻いて食べろという。食べればどうだ。牛肉はとてつもなくエロく、舌にしなだれかかって、コーフンさせる。
さらには鯛のかぶと煮と続いて、鱧と鮑の鍋と来てしまった。そう来てしまった。
滋味深いはもの出汁に浸る、鱧と鮑、椎茸が喜んでいる。
ああ、箸が止まらない。
そして、トマトの自然な甘みが生きた冷製アマトリチャーナ。
最後は、塩を使わぬうどんを先ほどの鱧出汁で。