揺るぎない料理がある。
例えば、コートドールの「季節野菜の蒸し煮、コリアンダ風味」やラブランシュの「イワシとジャガイモのテリーヌ」などである。
ルコックの「スモークサーモン」もその一つだろう。
必ずアミューズで出されるこの料理は、長らく毎日、変わらなく出されている。
鮭やマスの産地や季節、個体差で、仕上がりが変わるのだろうが、我々にはほとんどそれを感じさせない。
ほのかに燻製の香りをまといながら、脂の甘みをじっとりと舌の上に這わせていく。
その幸せを噛み締めながら、ああまたルコックに来られたんだという喜びが湧き上がる。
おそらく目に見えない、改革や革新もあるのだろう。
それでなければ、いつも同じように我々の心を揺さぶることはできない。
それがあってこそ、初めて「揺るぎなさ」は継承されていくのである。