飯田 「柚木元」

深山の只中に一人佇む。 

食べ歩き ,

今まで三つ葉のことを、なにも知らなかった。
食べながら、素直にそう思った。
天然三つ葉と肉を柔らかくする二輪草の熊鍋である。
三つ葉は、都会で見かける姿とはまったく違う。
陽を得るために、葉は大きく広く、茎は細い。
三つ葉と二輪草を鍋に落とし、熊肉に火を入れる。
小鉢に取り分けた、草と熊を口に運ぶ。
その途端目を丸くした。
ここに不純は一切ない。
三つ葉は、澄んだ香りを放ち、口腔や鼻腔、体の粘膜という粘膜を清める。
ハッカのような爽やかな揮発成分があって、それに本能が察知している気がする。
体の淀みや濁りが、浄化されていく感覚が張り詰める。
そこへ熊が甘い脂を滴らせながら、ゆっくりと消えていく。
その肉にも、一切の汚れがない。
食べながら、深山の只中に一人佇んでいるような情趣があった。
この動物も植物も、自然なままにいて、精神を引き締め、心を澄ませてくれるのだ。
飯田市「柚木元」にて