手がきれいな人である。

手がきれいな人である。所作だけでなく、白く、ツルンとした手で握る、姿がいい。

「手がきれいですね」というと、「顔が悪いから、手だけはきれいにしているんです」と、笑った。聞けば、自家製クリームを塗り、外出時は手袋をしているのだという。

職人である。清潔という職人の第一を心がける藤永大介さんは、仮借なき個性で現状に慢心しない、優れた職人の才能もたずさえる。。

その結実が、「すし通」だけのすしを生む。素晴らしき先人達の技を、現代の活かった魚に施せば、ケンカするのではないか? そんな疑問から、酢飯と魚が一つの味になる、「合一」という理想を求めて、日々研究をした。

学術書を読み、顕微鏡で細胞を観察し、うまみを引き出すため、どのように寝かし、包丁を入れ、水分を抜くか、考え抜いた。

昆布〆ながら、しっとりと水分を含んだ平目や春子。50本の隠し包丁を入れたトロ、淡雪のように溶けて消える穴子。酢飯と一体化するよう、裏側に隠し包丁を入れたスミイカ。その胸弾む驚きは、食べてみないとわからない。

「まだ道半ばです」と、明日を、未知の味を目指す彼のすしは、あなたを待っている。