感動のように頼もしく

食べ歩き ,

感動のように頼もしく、力強く揺らめいて、グラスを、我々の顔を照らし出す。
心を安寧に導く暖炉の灯りが、奥でうごめいている。
広尾「ACCA」の夜。
笑顔の素敵な弟さんが料理を説明し、運び、ワインを注ぐ。
ホタルイカのリングイネを、一口食べて絶句した。
雄だけを選んで作ったというラグーは、たくましくも穏やかな海の滋養に満ちていて、
食べるほどに味わいが膨らみ、心が豊かになっていく。
うま味が濃いのに丸い。甘いのにシャープな後口がある。
これぞ天然の力なのか。
その味わいを、しなやかながら腰を秘めたリングイネが受け止め、口元に登り、舌を通り過ぎていく。
土佐ブンタンにペコリーノをかけた驚きで始まり
互いのミネラルの抱擁が、ため息が出るほどおいしい、なめたかれい、筍、生海苔、牡蠣のカルトッチョ。
蟹の香りに富む、白ポレンタとのラザニア風
最後に熾火で焼き上げてくれたサウスダウン種子羊の内モモと外もも肉は、肉汁を躍らせる。
若狭カレイとボッタルガのリゾットとトリュフをかけたアスパラガスのミラネーゼは、ボッタルガもトリュフも突出していない。
個性あるものを使いながら、一つの味、自然な風合いにまとめている。
こんな使い方ができる料理人は、いるのだろうか?
食べていて茶懐石の志と、自然と共生してきた日本人の美学を感じた。
帰り際に林シェフと話したら、「辻留」が大好きだとおっしゃっていた。