元赤坂「辻留」

小芋と米。

シメご飯 , 食べ歩き ,

辻留のシメご飯。
小芋ご飯。
薄茶色に染まったご飯の中に、丸く形を整えられた小芋が座っている。
口に運べば、ご飯の甘みと素朴な小芋の甘みが丸く抱き合って、心を包む。
小芋の粘りが、米一粒一粒に装って、それが米の粘りと、優しく共鳴する。
それらの小さな小さな連帯に、心が震えた。
「おいしいなあ」。
思わずがな、言葉が出た。
心を寄せる人たちにも食べさせたいと思うのと同時に、若い人たちにも食べさせたいと願った。
地味な料理なので、響かない人もいるだろう。
だがこのご飯をしみじみとおいしいと思える人が増えれば、日本は、世界は、ずっと平安になるはずだ。
 
 
 
小芋は丸く剥くため、包丁は使わず、指と指と布巾で剥いて、天地を断ち、生のままご飯と炊く。。
ご飯は、出汁と薄口にて、少ししんみり目な味付けにして、炊き上がったら、青柚を振る。
炊き上がった小芋を潰さぬよう、そうっとよそった、料理人の心遣いが伝わり、胸が温まる。
留椀は、赤出汁に同寸極細に切られた茗荷とじゅんさい。
味を一旦切って、再びご飯に気持ちを向かわせる、奈良漬、沢庵、柴漬けの香の物も完璧である。