白金「白金 芯」

地味好み。

食べ歩き ,

コースの締めくくりは、「愛知鴨と松茸のしゃぶしゃぶ」だった。
しかしこれよりも、コースで出された「太刀魚炙り」や「ちたけの湯葉しんじょう椀」よりも、その後アラカルトで頼んだ、「干瓢の胡椒煮」400円の方が、心に刺さるのはなぜだろう。
甘辛く煮た味わいの中で、ヒリッと胡椒がアクセントする一瞬に微笑みながら、盃を重ねる。
やはり微かに辛さを加えた「アオリイカと鱧子の酒盗あえ」600円で、燗酒をやる。
「この小さな一皿で、一合はいけるなあ」なんて思いながら、天穏をすすった。
年を重ねたせいだろうか。
生意気ながら、普段ごちそうに出会いすぎて、ご馳走が日常になりつつあるせいだろうか。
一万円のコースよりも、数百円の小皿がたまらなく愛おしい。
最後は「鶏肝煮」をお願いした。
親鳥の肝なのか、肉質がしっかりとしている。
だから一口ではいかずに、少しずつかじりながら、酒を舐める。
燗酒の温度で膨らむ肝の香りを、鼻奥で捉えながら、ゆっくりと今宵の時を締めくくった。
白金「白金 芯」にて