ざぶん。
一口麺を食べた瞬間、僕は慈愛の海に包まれた。
お馴染みのペスカトーレである。
魚の姿はどこにも見えないが、口の中では波がうねっている。
豊穣なる海の恵みが舌を包み込む。
ヴィチドミーニのリングイネが、魚のすべてをまといながら滑り込み、たくましき歯ごたえの中から、重なり合ったうまみをにじませる。
深い。どこまでも深いが、味に透明感がある。
そしてなによりも、食べていて顔が少し赤らんでしまうような、エレガントさがある。
8種の魚の出汁によるペスカトーレである。
堂々たるイタリア料理だが、日本人にしか、いや宮木シェフにしか思い浮かばないだろう、イタリア料理である。
「mondo」にて。