銀座「すきやばし次郎」

今月の次郎5/31

食べ歩き ,

今月の次郎5/31
「すっかり握るのが遅くなっちゃって」。
そう小野二郎さんは言われるが、とんでもない。
変わらず手際よく、正確ににぎられる。
ウニ、いくら、小柱という軍艦巻は、二郎さんが握った酢飯を弟子に渡し、弟子が海苔を巻いて、ネタを盛って出される。
その弟子に裸の酢飯が渡る瞬間を見ているが、どれも寸分たがわ姿である。
以前NHKで、二郎さんの握る酢飯を測定したときは、3粒以上違わなかった。
その驚異的な技はそのままである。
ただ他人にはわからないイメージが自分の中にあつて、常にもっとおいしく、いいものを出すにはどうしたらいいかと考え続けてきた二郎さんにとっては、もどかしいのかもしれない。
今日も、一点の曇りもなき握りだった。
シマアジは、いつもと違って少しイカっており、凛々しい歯応えと品のいい脂の柔らかさが対をなす感がよかつた。
どれも素晴らしいが、特によかったのが、コハダと鳥貝である。
キリッと締められたコハダは、清々しさを感じる旨味を流して、酢飯と一つの体になり、喉を濡らす。
鳥貝は、分厚く、喉に落ちゆく刹那、メロンに似た甘い香りを立ち上らせて、去っていく。