日本橋三越前「蟹王府」

上海の人たちが食べているもの

食べ歩き ,

「上海の人たちが食べているものを作ってください」
支配人が、そう料理長に頼んで作ってもらったのがこの料理だった。
おそらく正確には、「上海のお金持ちがいつも食べている料理」だろう。
「ゆで白菜の上海蟹ソースかけ」である。
白菜というどこにでもある安価な食材に、高価な上海蟹を4はい近く使ったソースをかける。
これは確かにレストランではメニューとして成立しない。
だが高価なものを食べ慣れたお金持ちは、きっとこういう料理をひっそりと楽しんでいるのに違いない。
たまらない惣菜である。
じっくり茹でた白菜はトロンとなって、その優しい甘みが、蟹ミソの濃密なうま味を受け止める。
白菜の甘みと蟹ミソのうまみ。もう考えるだけでもいけません。
これはお下品を承知で、白菜をズルンと音を立てて吸い込もう。
するとカニミソのいけない香りが膨らんで、顔がにやけちまう。
あとは脇に白いご飯があれば完璧である。
 
2022年最後の外食にて