スナップエンドウのおかゆ

食べ歩き ,

「いま炊き上がりました。スナップエンドウのおかゆです」。
置かれた器から、米の甘い香りと豆の青い香りが登ってくる。
並んで座った一同の顔が、香りに包まれて、幸せな笑顔となった。
金沢「片折」、最初の料理である。
おかゆを口に運べば、ぽたっと舌にのって、静かな甘味を滲ませる。
ほとんど塩気がない。
淡い、淡い、米と豆の味しかない。
だからこそ、舌を清め、鼻を洗い、喉を開く。
最初の一皿に、塩気を使わない勇気に心打たれる。
米と豆の力を信じて、始まりの挨拶をする誠実に、熱くなる。
聞けば、スナップえんどうのサヤの湯がき汁で、洗い米、浸水したものと水でおかゆを炊いたのだという。
塩は、さやの甘さを塩で引き締めるために、三つまみ、熱いとほぼ感じないくらいに入れ、スナップえんどうの実を炊き上がりのお粥にちらす。
食べ終わると、余韻に微量入れた塩気が生きて、米と豆の甘みが残る。
最初からウニやキャビア、うまいもので挨拶をするより、どれだけ贅沢なのだろうか。
派手さや華美に目を奪われてはいけない。
美味の本質はここにある。
金沢「片折」の全料理は別コラムを参照してください