なんでこんな店がなかったんだろう。

食べ歩き ,

いけません。こんな店はいけません。
カウンターの前に座ると、目の前には小澤料理長が立っていて、次々と出来立ての料理を出してくれる。
まずつきだしには、サバと海苔とチーズのxo醤、ニンニクと唐辛子に鮭と干し貝柱のxo醤、泡菜という発酵三兄弟が出されてしまう
もうこれだけで、酒がグイグイ飲めてしまうじゃないですか。
そしてこれですよ
牛レバーの低温調理がやってきた。
レバー刺のようでそうではない。
ねっとり甘く、レバ刺しの食感と焼いたレバーの香りを両方備えた、とてもエロい料理なのです。
「はい焼きあがりました」と、出されたのは出し巻き玉子。
普通の玉子焼きと思いきや、中にはピータンが入っているじゃありませんか。ああ、一筋縄ではいかない、カーブを描いた玉子焼きの味が酒を飲ませます。
そして畳み掛けるように言うことは、
「今ハチノス焼とホルモン焼いています」。
もうやめて。紹興酒じゃなくて、これは焼酎だあ。
香ばしいハチノスの食感を楽しんでいると、翡翠茄子ときた。大根餅ときた。優しいナスの甘みに目を細め、熱々大根餅のホクホクに笑う。
すると小澤料理長が言うことには、
「はい今焼きあがりました、チャーシューです」。
焼きたてチャーシューの肉汁に笑っていると、また次の一手がきましたよ。
「低温で調理した鮎です」。
コンフィじゃないですか。鮎はホロリとくずれて、ほのかな甘みとワタの苦味を舌に落とす。
この緩急自在、変幻自在の酒を飲め攻撃がたまりません。
「はい焼きあがりました、羽根つき餃子です」
こうきましたか、羽はパリン、皮はもっちり、そして餡には噛みしめる喜びがある。
さらに辣油には、クミンを加えるという裏技が泣かせるね
「締めはどうしますか」
「オイスターソースの和えそばでお願いします」。
すると適量の和えそばが運ばれる。
麺の焼き具合、ソースの量、あえ具合などシンプルながら最も難しいと言われるこの麺料理も、一分の隙がないほど完璧であります。
さらに欲張ってチャーハンも頼みました。
脇屋シェフも好物だと言う、ニンニクと唐辛子に鮭と干し貝柱のxo醤の炒飯であります。
これも少量ながら、練れた香りとうま味が米一粒一粒にまとわりついて、レンゲを運ぶ手を加速させます。
まだしばらくやっているそう。
なんでこんな店がなかったんだろう。
またいかなくちゃ。
赤坂「トゥーランドット臥龍居」にて。