「カレー」。
夏にこの二文字が浮かぶといけません。
もう、いてもたってもいられなくなる。
銀座では、様々なカレーが食べられる。
そこで悶々と悩むのだが、結局僕が目指すのは、この店である。
夏にカリーフェアが始まり、三種類のカリーが楽しめる。
鶏もも肉のカリーもいい。和牛三枚肉のカリーもいい。
だがいつも、魅せられるように頼んでしまうのは、「オマール海老と帆立貝のカリー」である。
サフランライスの黄色に、帆立の乳白色とオマールの赤が映えている。そこに茶色のカレーをとろりとかける。
口に運べば、深くて丸いうまみが広がって、後から香りが立ち上がる。アメリケーヌソースやココナッツミルクも入れているというが、まろやかに溶け込んで、美味しさの底支えをしている。
サフランライスの香りの利かせ方や、ホタテとオマールの火の通しも、実に的確である
すべてに渡って、老舗洋食店の矜持と技が貫かれたカレーは、エレガントさに満ちて、食べ進むごとに、心が溶ける。
ふんわりと優しいホタテと、歯応えが確かで、香り高いオマールを、是非カレーと一緒に食べて欲しい。
一さじ口に入れてゆっくりと噛む。目を閉じればあなたは、海の豊饒に抱かれている