いいねは少ないだろう。
大根のなますである。
何気なく食べ、噛んでいくと、心に灯りが差した。
同寸、同幅に切られた短冊大根から、じんわり甘みが滲み出る。
下地の甘酢にも甘みはあるが、大根の甘みを邪魔しないよう、そっと忍んでいる。
さらに噛んでいくと、ぐにゃりとしたものが歯に絡んできた。
鯨のウネス(下顎から顎にかけての部分)だという。
しなやかなそいつは、大根の歯ごたえを持ち上げる。
胡麻も木の芽も、すべてが大根のためにある。
すべてが、大根に愛を注いでいる。
「冬になって大根が甘くならんと作りません。これからもっとおいしくなるよ」。
老練なご主人は、そう言って、優しく微笑まれた。
博多畑瀬にて。