どこにでもある食材から“奇跡”を生み出す

食べ歩き ,

セロリである。
どこにでもあるセロリである。
それを切って蝦子をまぶす。
ただそれだけのことなのに、どれだけ料理の真髄が詰まっているのだろうか。
セロリの真ん中部分だけを、同寸、同幅に、手早く切る。
蝦子を、以上でも以下でもない最適な量をまぶす。
噛めば、シャキシャキとセロリのエキスが弾け飛ぶが、まず蝦子の香りが広がって、後からセロリがほんのりと匂いを漂わす。
細い一本一本が、最適な味付けであり、蝦子とセロリの出会いの妙があり、いくら食べても飽くことのない、痛快な歯ごたえがあり、理にかなった滋養がある。
そして何より、口に入れた途端に「ふふふ」と笑ってしまうほど、うまい。
西大后は、126名いた料理人たちの技を見るために、この料理を作らせ続けたという。
どこにでもある食材から“奇跡”を生み出す、「厲家菜」の一品である。