名古屋でとんかつといえば味噌カツであり、東京のとんかつ文化は育ちにくい。
「あさくら」という、優れたトンカツ屋があったが、残念ながら今年の6月に閉店してしまった。
そんな逆境へ切り込んだのが8月に開店した「とんかつ@」である。
そして先週、もう一軒「とんかつ ぶうたろう」が開店した。
畏れ多きも、不詳私のプロデュースである。
使う豚は変わらず、佐助豚、走る豚、愛農ナチュラルボーク、ゴーバルボーク、さいとうポークである。
ただし衣の糖度と粗さを変えた。
ご飯も味噌汁も変えた。
味噌汁は赤だし、ご飯はいちほまれである。
「ザクッ、サクサクッ」。
衣に歯を立てると、痛快な音が響いて、肉にめり込んでいく。
やわな肉ではない。
きめ細かく、噛むほどに味わいが膨らむ、凛々しい肉である。
食べるごとに鼻息荒くなり、上気し、「肉を食らっているぞお」と、叫びたくなるが、一方で脂の優しい甘みもある。
さらには注文してから手切りする、「豚生姜焼き」、シャンカール野口のスパイスを使った香り高い「シャンカール豚カレー」や、粗挽きミンチでつくる、肉肉しいミンチカツもある。
ここは、豚の魅力にとことんハマる店なのだな。
おりしも先週開店したばかりなのに、満席だった。
牛肉文化圏で豚肉はおろか、とんかつ文化が普及しなかった関西でも、ついに先月「あまから手帖」がとんかつ特集をしたように、名古屋でも確実に良きとんかつが芽生えている。
「名古屋にとんかつを食べに行く」。
そんな時代がやってきた。