この店へは、4人で行くに限る。
「走る豚」は、その名の通りアスリートで、そのへんの食レポが肉料理を口にしたときに発する「柔らかあ〜い」とは無縁である。
筋肉質の肉に、歯をめり込ませて肉汁を
にじませる、噛む喜びがある。
「さいとうポーク」は、噛んだ瞬間に、脂と肉汁が溢れ出る、生き生きとした豚肉で、「走る豚」よりは柔らかいが、肉質はきめ細かい。
ご覧のとおり、同じ重さながら分厚い肉を噛み込むと、脂の甘い香りが広がっていく。
しかしそれはすうっと溶けて、あとから肉のたくましさが追いかける。
脂の甘美と筋肉の凛々しさの両者が存在するからこそ、互いの良さを引き立てる。
久々にいただいたが、美しい肉だなあ。
最後は「走る豚」のヒレカツといってみた。
ヒレの優美さに合わせて、ロースカツより細かな衣をまとったとんかつは、断面に肉汁が滲み出して、濡れている。
このまま口に運んだのではこぼれてしまう。
だから皿に置いたまま、切り口にキスをした。
そうして汁を吸ってから、噛み込んだ。
「走る豚」が持つ肉の甘みが押し寄せる。
最初から圧倒しながら、食べるに従って、さらに膨らんでいく。
とんかつを食べる醍醐味、ここにあり。