ズブッ。
骨付き肉にナイフが突き刺さっている。
「さあ、肉を喰らえ!」と、叫んでいる。
好きな方は、一人でこれを、全部食べてしまうという。
ドイツ料理、シュバイハクセである。
二時間もじっくりローストしてあるから、皮がパリンパリンである。
パリンッ。
歯を立てれば皮が弾け、とろりと皮下のコラーゲンと脂が、甘く流れ出る。
その食感の対比がたまらない。
三枚目の写真を見てもわかるよね。
肉はしっとりとして、ほどよく塩が回って、顔を緩ませる。
ドイツならここでビールかワインだろう。
しかし今夜は「ドイツ料理に日本酒を合わせる会」であった。
ソムリエの新井さんが選んだのは、車坂の二十年常温熟成古酒である。
今の車坂の杜氏さんは古酒を作らないので、希少な酒だという。
適温な温度に上げられた古酒には、練れた甘みがあって、それが豚の甘みと見事に溶け合い、僕らの知らない新天地へと連れて行ってくれるのだった。
「レストランに行く」という楽しみは、つまり、こういうことなのである。