からく丼。

食べ歩き , シメご飯 ,

銀座「鮨からく」の戸川さんとは、30数年のおつきあいになった。
コロナ期は休まれていたが、お客さんの熱望もあって復活したのが、昼の「からく丼」である。
マグロ赤身のづけ、煮穴子、鯛のごま醤油漬けが、たっぷりと乗った丼である。
「さあどこから食べようか」。
いつも悩む。
づけの凝縮した鉄分の甘みで、酢飯をかきこむのもいい。
ふわりと煮た穴子のコクと甘辛いツメの味わいを、酢飯で受け止めるのもいい。
あるいは、鯛に香ばしくからんだ胡麻醤油の旨みで、一気に酢飯を食べるのもいい。
魚を食べて酢飯を食べるのか。魚と酢飯を抱き合わせて食べるのかも悩む。
だが決まっている。
赤身から鯛、穴子の順に三分の一ずつ食べ、それを同じように3周していく、メリーゴーランド方式である。
3周目は、酢飯と魚を握り寿司のように一緒にして食べる。
揺るぎない。
幸せが、ゆっくりと体の奥から競り上がってくる。
そうそう、エビ、煮ダコ、穴子、卵、干瓢が散らされた、ばらちらしもいいですぞ。
これもまた、誰を主役にするか、句読点は何にするか、最後には何を食べるかなど、嬉しい悩みが待っているのだ。