おいしいが生んだ奇跡。

食べ歩き ,

おいしいが生んだ奇跡。
食事とは会食者同士で気持ちを共有し、互いに生きていることの喜びを確認し、人間同士としての心の関係をより密接にしていく行為である。
「笑食会」と称した昨日の食事会は、東日本大震災の翌月に飲食関係の有志を募り、自分たちのもっとも得意な能力で人々を笑顔にし、その笑顔がチャリティーにつなげたらいう主旨で始まった会の第三回目であった。
11店舗 24名の料理人とサービスの方が20数名のお客様を迎えてのイベントである。
出すメニューの打ち合わせは、深夜や明け方に及び、並々ならぬ苦労を重ね、当日を迎えたという。
「武蔵」のにぎりで始まり、「しん」の馬肉と豚足、「ミサゴ」の新玉葱のブランマンジェと仔羊料理、「アベス」の伊勢海老のコンソメスープ、「レストランt.r」のスズキのパイ包み焼き、フォンダンショコラや苺のムースグラッセ、「COMME PARIS」の焼き菓子。選び抜かれた数々のワイン。
この日のために練りに練られ、完成したスペシャリテが、笑顔を呼ぶ。
「おいしいもので笑顔になってもらおう」。シェフたち、サービスの方々の純粋な想いが、味に染みて、人に、料理に、そして生きていることに感謝する一夜だった。
この日のために来られた伯楽星の新澤さんから、被災地の現実を胸に突き付けられ、涙を燃料に生きてきた日々を噛みしめる。
そして会食者全員、そして料理人、サービスの方全員。
あの場、あの店、あの時間にいた人たち40数人全員が、生きることを考え、おいしいものをいただいた事に深く感謝し、幸せを分かちあった。
帰り際にシェフやサービスの方々と挨拶をしたが、皆さんの顔が真ぶしい。
キラキラと、生きている。
笑顔。笑顔。
おいしい料理が生んだ奇跡の時間が、ここにあった。