「青菜炒め」。
この店でてまず驚かされたのがこの料理だった。
空心菜は、甘い油の香りを一本一本がまといながら、数秒前まで畑で生えていたかのようにみずみずしく、力強い香りを放っている。
その命である水分を火と油の技によって閉じ込めた、最良の料理であろう。
さらにはその量にも驚く。
「ある程度量を食べてこそ、真味がわかると思うんです」という橋口さんは、金針菜もきぬがさ茸も、取り合わせる食材は少なめにして、皿一杯に盛りつけるのだ。
こうして存分に、シンプルに食べてこそ、食材の印象が強く心に刻まれるのである。
龍口酒家の流儀は、予算と腹具合を伝えて、橋口さんに身も心も委ねることだ。
ただ困るのは、「もう少し食べますか」という誘惑に負けて、つい食べすぎて(飲みすぎて)しまうことである。
写真はイメージ