焼きそば11の顔

食べ歩き ,

焼 き そ ば
中華料理店のオリジナルあふれる焼きそばから、懐かしのソース焼きそばまで、さまざまな焼きそばをご紹介。

広尾・花椒亭
広尾駅近くにあるモダンな中華料理店。二つの味が楽しめる香港火鍋が売り。「ニラもやし焼きそば」千二百円は、シンプルながら随所に技が光る逸品。パリッと焼いた細い麺の上には、炒めたもやしと黄ニラだけという簡潔さ。丹念に頭とひげを取ったもやしは、噛んだ途端に水分がはじけ飛ぶほどみずみずしく、黄ニラは香り高く、麺一本一本に油の香りがまとわりついている。味付けは最小限の淡さで、それが黄ニラともやしの味わいを際立たす。下には薄味のスープが少量注がれており、それをからめて食べれば、いっそう味わいが増すという段取り。ビールの友にも最適。

閉店

上野毛・吉華
四川料理の名手、久田大吉氏が率いる中華料理店。香り高くめりはりの効いた料理の数々に出会える名店。四川風田舎焼きそばと題された「小子麺」千三百円は、人気メニューの一つ。表面をカリッと香ばしく焼きあげた極細麺の上に、芽菜(ヤーツァイという四川の漬け物)の微塵と挽き肉を炒めてスープを加え、調味した後、溶き卵を流し入れて固めたアンをかけた料理。調味は控えめで、卵の甘みと芽菜の塩気、豚のうまみが調和してなんともうまし。食べ進むうちにじわりとうまみが増し、一気呵成に食べてしまうは必至。

閉店

京橋・雲楼
かつて原宿に福禄寿という中華料理店があり、干し豆腐や砂鍋など、揚州料理売りにしていた。この店の人気が五目肉焼きそばで、他店にはない味わいとして親しまれ、閉店時は多くのファンが嘆いた。以来幻の焼きそばとされていたが、雲楼は福禄寿の源流となった店で、名物焼きそばも健在。近隣の会社員に人気で、昼時には、ほとんどの客が食べている。焦げ目がつくようにカリッと両面を焼かれたそばに、醤油味のアンがかかったいわゆる五目焼きそばだが、具がユニーク。大きめに切られた、鳥肉、チャーシュー、シイタケ、サヤエンドウ、エビ、筍といったところは他店とは代わりないが、これに豚のレバーやマメ、シロといった臓物が入る。それぞれの食感や味わいの違いが楽しく、クセになる味である。あとは、自家製豆板醤や酢をかけてどうぞ。「五目肉焼きそば」千二百円。

閉店

神保町・上海朝市
神保町「新世界菜館」が始めた手打ち麺と手延べ麺、点心の店。おすすめは手打ち麺による「上海やきそば」   円。野菜類と麺を醤油味で炒め合わせたおなじみの焼きそばだが、もっちりとした麺のコシがよく、野菜の甘みや醤油のうまみとともに調和して、和みの味わい゛を生み出している。

閉店

池袋・栄利
池袋北口から徒歩十分の中国。広い店内は常に満席。、しかも中国人学生が多く、その喧噪がおいしさを手助けしている。人気の秘密は、「ピータン鳥肉包み」や「大根辛みあえ」、「青唐辛子と豚腸の炒め」といった、他店にはない上海家庭料理の数々と、三百種に及ぶ品数の多さ、一皿一皿の料理の多さ、値段の安さ。「牛バラにく五目あんかけ」や「海鮮とレタスあんかけかた焼きそば」など、焼きそばは七種類。おすすめは「あさりと青ねぎの焼きそば」八百九十円。タリアッテレのような幅一センチの麺を、塩味でねぎとあさりを炒め合わせたやきそば。ねぎの香りとあさりの滋味、油のコクある香りが、しっこりとしたコシがある幅広麺にからんでうまし。辛みの効いた「タコイカ大蒜唐辛子青葱焼きそば」八百九十円も人気。

閉店

六本木・御膳房
東京で唯一雲南料理を看板に掲げる店。雲南料理の麺といえば、「過橋米線」が有名だが、焼きそばもまた他店にはない味わいをもつ。例えば「雲南炒麺」千円。中太麺を両面カリッと焼きあげた上に、極細切りにされたトマト、ナス、シイタケ、筍によるアンがかかる。野菜類のやさしい旨味は渾然一体となり、ほんのり酸っぱく、甘く、辛い。大地の暖かみを感じさせるこの味わいが雲南の特徴で、さらに食べ進むと雲南省特産の調味料である甜酢によるまろやかなうまみが広がっていく。豚肉、ニラ、ニンジン、もやしによる「什景米線(野菜たっぷり焼き米線)」千円もおすすめ。

麻布十番・浪花屋
ご存じ、鯛焼きの人気店。店内で食べられるかき氷も魅力だが、昔懐かしい焼きそばも注文する人があとを絶たない人気メニューの一つ。細麺をキリッと辛く、ほんのり甘いソースで炒め合わせたソース焼きそばに、紅生姜を添え、青海苔をかけた正当スタイル。具はキャベツに天かす。シンプルイズベストの道を行く焼きそばで、麺は油っぽくなくもちもちとしてしみじみうまし。ソースは薄めの味付けながら、「少なっかたらかけて下さいと、ソースの瓶がおかれる。普通盛り五百円、大盛り六百円

横浜・桜木町・新雅
親子三代で営むいわゆる町の中華という佇まいだが、古くからもやし焼きそばが人気。その「ヤキソバ」六百円のうまさの秘訣は自家製極細麺。柔らかめとかためが選べるがぜひかためを。カラリと揚がり、口の中をパリパリ音を立てながら崩れていく、軽やかな麺は、上にかかった豚バラ肉の線切りとたっぷりのもやしによる塩味のアンと絡まって、一気に虜となる。もやしのシャキシャキ、麺のパリパリを楽しみながら飲む酒も格別。オイスターソース味の「牛ヤキソバ」八百五十円もおすすめ。

砂町銀座・銀座ホール
創業七十年の下町の食堂。中華丼からかつ丼、懐かしのアイスクリームからラムネまで、幅広く揃える。「特製ソース焼きそば」は四百円。蒸した細麺に、キャベツ、もやし、豚肉小片、天かす、紅生姜添え、青海苔かけと見ためは至って普通の焼きそばだが、特製と名乗るゆえんは、ソースにあり。市販品にりんごのすりおろしや蜂蜜を加えたもので、ソースの角が取れて、まろやかかつ味に深みが増している。食後には戦前の機械で作った小倉アイスをぜひ。

有楽町・慶楽
昭和二十五年創業という有楽町の老舗格の中華料理店。オリジナルメニューとして古くから人気のある「かき油牛肉焼きそば」は    円。蒸した細麺両面カリッと焼きあげ、アンをかける。オイスターソースが一口大に切られた牛肉の旨味を持ち上げ、シャキッと火を通されたレタスアクセントをつける。飽きぬうまさをもった焼きそば。その他河粉という、幅広麺を使った焼きそばもおすすめ。

閉店

外神田・萬楽飯店
老夫婦が営む、豊富で珍しい中国の酒類を揃えた店。「鳥羽餃子」や「焼豚」など割けに合う肴を数多く揃えるが、焼きそばはユニーク。「菠菜炒麺」七百円は、ほうれん草のエキスを加えて練った麺を使う。薄緑の幅広の麺を野菜類と炒め、醤油味で仕上げたもの。プラス二百円で腸詰や焼豚を加えることも、辛くしあげてもらえることもできる。

横浜中華街・慶福楼
福建と上海の料理を出す店。塩味の「福建風焼きそば」八百五十円の魅力は麺と味付け。卵が入っていないきしめんのような幅広太めんは、もちもちとしてやさしい塩味となじむ。具は豚肉、あさり、油揚げ、ニラ、白菜。白菜の甘みと歯応え、ニラの香りのアクセント、あさりの滋味がめんにからんでうまし。日本の素麺を揚げて、戻してから炒めたという「福建風鮮魚入り焼きそうめん」千円もおすすめ。