新生姜は米の大きさより少しだけ大きく、さいの目に切る。
油揚も同寸に切って薄味で炊いておく。
ご飯と生姜を合わせ、薄味で炊き、炊き上がったらお揚げを混ぜ合わせる。
初夏に欠かせない、新生姜ご飯である。
口に運ぶと、生姜が香り、米の甘い香りが広がる。
新生姜の穏やかな辛味が、清涼を呼び、ご飯の甘みを引き立てる。
留椀は、どじょうと笹掻きごぼうのお味噌汁。
酒で下ゆでしたどじょうが、ぬるりと赤だしと混じり合ううま味がたまらない。
細く細く仕立てられた笹掻きゆえに、土の香りが邪魔せず、食感の痛快が味噌汁の魅力を膨らます。
そして香の物は、昆布の佃煮と瓜、かくやである。
「かくや」は、江戸初期の料理人「岩下覚弥」の考案という説や、沢庵和尚の弟子「覚也」が考案したという説がある、香の物を使った料理である。
沢庵を桂むきし、極細切りにして、塩を少し抜く、そして同じく極細切りにしたきゅうりと合わせ、生姜汁で整える。
昔やってみようとトライしたが、とてもこんなに細く同寸に切れない。
桂むきもできない。
プロの仕事である。
この細切りがあってこそ、ふわりと空気を含んでまとまり、たえなる食感を生み出す。
初夏の一汁一菜。
ああ願うことなら毎朝食べたいなあ。
「辻留」にて。