「肉の生命力を伸ばす」焼き方である。
高橋シェフが肉を焼くと、もうお亡くなりになっているはずの肉が、命の雄叫びをあげ、体の内にに眠りし優しさや猛々しさを爆発させる。
その味は、とても艶かしい。
近江牛の炭火焼である。
中心はまだぬるいくらいで、微かにナッツ香が漂う。
「噛み締めて」と肉が囁き、僕らは嬉々としてそれに応える。
一方「ジビーフの炭火焼」には、動物としての雄々しさがある。
食べると、「ふんっ」と鼻息が出て、自分の体の中に力がみなぎっていくのがわかる。
一口噛んだ味と、そのあとに噛み締めていく味に変化があって、飲み込んだあとに喉が鳴る。
それはきっと、本能が喜んでいる音なのだ。
人間がわざと造成したのではない健やかな滋養を感じ取って、湧き上がって来た感覚なのだ。
ジビーフとは、「食べることによって、自分が生きている（生かされている）ことを確認する肉」なのである。

Ps ジビーフに添えられた、同じ牧場で作られたメイクィーン。
芋の甘みとはなにかということを教えられた
食べた瞬間に崩れ落ちましたよ。奈緒子さん。
鯖も鶏肉もパスタもズッパも素晴らしい。一点の曇りなき「イルジョット」の料理は別コラムを参照してください