「維新號」は、九段下で高級出張料理店としてスタートし、貴族院の政治家や高級官僚に可愛がられたが、昭和23年、銀座に店を移転する。
先代が、なにか庶民に喜ばれるもの、一つでお腹が一杯になるものをと考え出したのが、中華まんじゅうだった。
物資不足の時代だったが、肉も野菜も妥協せず、最高質の素材を使ったのだという。北海道産貝柱を使い、挽肉を使わずに、毎朝包丁で叩いて作った。
そのため、都電の電車代8円、カレー、もりそば20円の時代に、一個50円で売り出したという。
売り出して一か月間は、一日10~20個しか売れず、いよいよ追いつめられた二か月後、ようやく数が出始めるようになる。
現在でも作り方は変わっていない。大きさも変わっていない。
半世紀を優に過ぎた中華まんじゅうは、今でも毎日、本店の70歳近い熟練の職人が、数百個を手作りするのだという。
固くもなく柔らかくもなく、赤ちゃんの耳たぶ位になるよう、季節や温度による違いを、的確につかみ、皮を発酵させる。
また皮を包むときも、襞を作りながら少しずつ回し、下側を均等な厚さにしていくのだそうだ。
社長のさんはおっしゃった。「うちは色々な料理をお出ししていますが、作るのが一番難しいのは、饅頭です」。
シンプルであるからこそ、そこには深い困難がある。
その維新號の中華まんは大きい。両手で持ってほおばりたくなるほど大きい。闘志に火がつくほど大きい。
もっちりとした皮は厚く、包容力があって、なんだか気分が大らかになる。貝柱の旨味をすった肉汁も十分で、肉と野菜のバランスもいい。
狙い目は開店直後。出来立ての肉まんは、肉のジュースが溢れ出て、この上なくおいいしいのである。
また、金木犀の香りがふわりと漂う、浙江省風のあんまん、季節の果物を入れ込んだ、香り高い胡麻まんも、お奨めである。
さらにこの店ならではの品が、揚げまんだ。一度蒸したまんじゅうを揚げたもので、カリッと香ばしい皮と本来のむっちり感との対比的な食感は危険な誘惑である。
維新號で、肉まん、あんまん、胡麻マン取材、実食中。このあとは銀座アスター!