もはや背徳である

食べ歩き ,

もはや背徳である。
一人前上海蟹5ハイ分の雄の白子炒めだ。
蒸された蟹からとった白子は、少量の油と塩にて、弱火で炒められる。
炒められてこそ、本来の生を発揮する。
口の中で、唇にしなだれ、歯に粘り、舌にまとわりつく。
甘さを超えた、濃密な味わいが、精を突きつける。
もう口の中で妊娠しちゃいそうな鮮烈が、ぐるぐると回って、陶然となる。
こんなものを食べていいんだろうか。
背徳感がせりあがる禁断の皿に、にたりと笑う。
千駄ヶ谷「小熊飯店」の夜。