〈まつや全メニュー制覇 あと8つ〉
ネギの芯とネギの外皮は、違う食べ物である。
その事を「まつや」はよく知っている。
今日頼んだ「鴨せいろ」も、「親子南蛮」も、ネギが入れられているが、同寸に細長く切った外皮が入れられている。
こういう仕事が、「まつや」の素晴らしさの一つである。
「山かけ」そばを頼む。
どのそば屋や立食いそば屋にも有る料理であるが、他は、かけそばにとろろ芋をかけただけであろう。
「まつや」のそれは、自然薯を甘汁(温かいそばつゆ)と合わせ、完全に一体化するまで、混ぜるに混ぜる。
だからそれは、つゆでもとろろ芋でもない。
さらりとしたつゆが、芋の粘りを和らげ、芋の甘みがつゆの甘辛さを優しくし、しみじみとしたおいしさを運んでくる。
そして青海苔の香りと山葵が引き締めて、「山かけ」の輪郭をくっきりとさせる。
これこそが「料理」というものであり、「山かけ」の本意である。
親子南蛮の卵の閉じ方が、絶妙である。
半熟具合が、これ以上でも以下でもない一点に、しかも均一な状態となっている。
「ああいい湯加減だあ、くつろぐわあ」と、卵が言っているかのような、気分なのだな。
「神田「まつや」にて。





