写真が地味なのでいいねは少ないかもしれない。だが
日本の宝である。
いや、世界の宝と言ってもいい。
今年上半期、新しく訪れたレストランの中では、ダントツであり、最高であった。
おそらくイタリア本土でも、容易に食べることが叶わないと思われる郷土料理が再現されている。
もし違う点があるとしたら、空気が違うという点だけではないか。
真の郷土料理とは、国境を超えて我々の心に飛び込み、自然と体に溶け込み一体化する。
そんな真理が体感できる。
待ちに待った小池シェフの新店舗は、門前仲町にできた。
「オステリア・ヴェッキオ・スタンポ」とは、古い切手という意味で、イタリアの古き良き伝統料理を伝えていこうという意味からつけたという。
イタリア古典伝統料理の盾になる意気込みが込められた、前店「オステリア・デッロ・スクード」では、二ヶ月ごとに20州のうちから一つの州の料理を、前菜、プリモ、セコンド、ドルチェをアラカルトで揃え、各州のパンも数種焼くという、剛腕で驚かせた。
今回は、前菜に一つの州の料理から、プリモ、セコンドは各州からという構成になっている。
訪れた6月は、前菜は6種類、プリモ6種類 セコンド5種類が並んでいた。
料理のすべてを、シェフ一人が作られている。
変わらずの剛腕で、寝る暇があるのですか。お家に帰られていますかと、余計な心配をしてしまう。
メニュー名でだけでなく、小池シェフの歴史背景も含めた解説が詳しく書かれているので、知的好奇心と胃袋がくすぐられ、迷いに迷ってしまう嬉しさがある。
3人で訪れたので、前菜全種類(うち3種類は盛り合わせにしてもらいました)
まずルニジャーナ地方の伝統的なパン「パニガッチ』にやられた。
丸いテラコッタに水、塩だけのゆるい生地を流し込み、同じもう一枚の器で生地と交互に挟みながにも重ね、上下の面から焼きあげる伝統的な手法のパンに生ハムとサラミを添えたものである。
パンにハムを乗せ、あるいは挟んで食べる。
小麦の微かな甘い香りとハムの塩気が抱き合う。
素朴である。
質素で朴訥な味わいである。
僕はトスカーナ生まれでもイタリア人でもない。
それなのにパンを、肉を噛み締めているうちに、涙が出そうになった。
山深い田舎に暮らす人々の慈愛を感じたからだろうか。
次に三点盛りの「肉のツナ鶏肉版 レンズ豆とサルサヴェルデ」をいただく
「キアンティのツナ」と呼ばれる昔から続く農家の保存食で、マリネした鶏肉を茹でてオイルと「キアンティの香り」と呼ばれる地元のハーブ塩で味付けしたものである。
鶏肉自体は淡白な味わいだが、添えられたレンズ豆とサルサヴェルデに痺れた。打たれた。
本来の甘みを生かしたレンズ豆が、しみじみと心を包む。
何気なく食べたサルサヴェルデは、目を見開くほど香りが高い。
聞けば、恐ろしい量のいたライアンパセリを使あっているのだという。
キアンティのツナは、本土でも何度か食べたことがあるが、これほど豆が味わい深く、サルサが香り高いものには出会ったことがない。
ズッパにも触れておこう。
フィレンツェの古いレシピを再現した赤玉ネギのオーブン焼きズッパ 「カラバッチャ」である
メ・ディチ家の食卓にも登っていたとされるルネサンス期から続くフィレンツェの伝統的な一皿で、赤玉葱とパン、チーズ、アーモンドをオーブンで焼きあげた古式ズッパだという。
カテリーナの結婚との因果関係で、 フランス料理の定番オニオングラタンスープの原型説も唱えられるらしい。
クタクタに煮たものという名の通り、汁状というより、煮込みである。
口に入れた途端に、永遠となった。
力強い玉ねぎの甘みが舌を抱き、喉に落ち、細胞に染み渡っていく。
アーモンドやシナモンの香りが漂い、異国に意識を飛ばす。











