「食べたいものを食べたい時にお願いする。寿司と焼き鳥はそうでなくてはと思うんです」。
寿司職人を30年やられている親方は言われた。
「焼鳥屋で皮を数本頼んでね。もう1本いけるかい? なんて聞くのもいいですね」と、続けられた。
18年やられるこの店は、客がめいめいに頼むお好みである。
「8席のお客さんが、一斉に好き勝手に頼むと大変ですね」と、聞くと、
「そういう時は、お客さんが察知して、頼むタイミングをずらしてくれたり、他の方の注文に乗ってくれたりします」。
そうそれが、お好みを頼める寿司屋の楽しみでもある。
単に食べたいものを食べたいタイミングで食べるだけではない。、
知らないお客さんと、いつしか連帯する共食感が生まれるのがいい。
場の空気を、お客さん同士が作っていく。
昔の寿司屋には、そんな暗黙の了解があった。
常連が多いこの寿司屋も、それがある。
「握りにしますか? それともつまみますか?」
「少し切ってもらえますか」。
「何にしましょう?」
「春だから、貝類とイカをお願いします」。
やがて出されたお造りは、赤貝、小柱、ホッキ、たいらぎ、スミイカの細造りだった。
これで酒を1合半飲む。
お造りに大根のツマがないのも嬉しい。
握りは、マコガレイ、カワハギ、赤身ニカン、アジ、コハダ、イワシ、鯖、海老、穴子、玉子に干瓢巻とかっぱ巻を、いただいた。
好きなタイミングで、好きなネタをいただく。
時折、柔和な親方と、世間話や寿司の話などをしながら寿司をつまむ。
こんな幸せな時間はない。
小鉢が4皿、お造り、そして握り、お酒3合、エビスの中瓶一本で22000円。
また来よう。



































