居酒屋の理想は、五拍子にある。
料理よし、酒よし、器よし、盛り付けよし、空間よしという、五拍子である。
すべてが揃って、唸らせる居酒屋は、全国にそうはない。
僕にとっては、武雄の「あん梅」、名古屋「花いち」、湯島「シンスケ」くらいだろうか(忘れていたらごめんなさい。ここぞというところがあれは教えてください)
しかし先日新たに、札幌平岸にあるこの居酒屋を知った。
店は、ご主人と若い女性2人で切り盛りされている。
最初に何気なく生ビールを頼んだのだが、その酒器といい、注ぎ方といい、ビールといい、完璧であった。
気を良くして品書き見れば、悩みに悩む料理が並んでいる。
突き出しから心を掴まれた。
煮豆である。
5色の豆を硬めに炊いて、煮汁にはわずかな酸味が漂っていた。
刺身は石狩の春にしんをお願いする。
なんと美しいのだろう。
均等に細かく包丁目が入れられた銀皮から、鮮烈な赤色がのぞき、「早く食べて」と、誘いかける。
じっとりと脂がのった身が、酒を呼ぶ。
前菜三種は、「石狩数の子の松前」、「毛蟹とうるいのおひたし」、「柳たこと海藻、朝月のゆず酢」であった。
それぞれに違う食感、色合い、味付け、香りがあり、取り合わせの妙があり、もうこれだけで酒2合はいけるな。
「根室たちのそば味噌焼き」も憎い。
とろんと溶けゆく白子のエロスに、朴訥なそば味噌の味わいが対を照らす。
「赤貝のぬた」はネギではなく、筍と菜の花と合わせて酢味噌あえにしてあり、これも大至急日本酒であった。
その他、赤酢の酢飯を、本鮪の赤身と中トロ、ネギ、沢庵のたたきで包んだ、「海苔つき 本鮪のおはぎ」。
豆腐の優しい甘みが生きた「自家製半生油揚げ」。
発酵の具合がほど良い「自家製秋鮭いずし」と畳みかけられた。
さらに極付は、地平線の彼方まで滑らかで、舌とディープキスをする「積丹あん肝のうま煮」でやられる。
締めは、ご主人自らが手打ちした蕎麦を、お願いした。
一つは、「北海道天然鮎そば」,で、煮た鮎からの滋味がつゆに溶け込んで、目を細める。
「岩のりたっぷり花巻そば」は、食べた瞬間に、波飛沫がたった。
最後は、濃厚な蕎麦湯で、心を落ち着かせる。
まだ品書きの三分の一しか食べていない。
こりゃ通うしかない。





































