一皿目で、心をつかまれた。
黄瀬戸の上に蕪が一つ乗っている。
「朝どれ小蕪と、蕎麦の実味噌です」。
若主人が優しい口調で説明される。
一口で、慈愛が溢れでた。
一口で、心が洗われた。
「あなたに会えてよかった」。
蕪がそう言って、微笑んでいる。
無垢で、たくましい大地のエキスが、ゆっくりと体に染み込んでいった。
最後の焚き合わせも、またやられた。
「干し蕨のひろうすです」。
ひろうすは、穏やかな豆の甘みを滴らせ、手間暇かけて戻し炊いた干し蕨は、生にはない、しぶというまみが潜んでいる。
穏やかさとしぶとさが手を結び、里山の懐に抱かれた。
「おいしいなあ」。
自然と言葉が漏れる。
だが、うますぎることはない。
今までの料理の強さを柔らかくうけとめ、留めのご飯に向かわせる思いやりがそこにはあった。
ご飯は、白山山系から流れ出す、最上流の山中にある棚田で収穫された米だった。
味噌汁は、ナメコとうち豆、お新香は胡瓜と山芋、そして見慣れぬものがあった。
名を「おあえ」と呼ぶのだという。
大根の間引き菜と唐辛子葉 麹味噌、青大豆きなこを合わせた、郷土料理である。
これをご飯に乗せて、掻きこんだ。
塩気、辛味、味噌のうまみ、ほのかなあまみ、葉のほろ苦みが広がつて、箸が加速する。
「ふうっ」と一息。
すると、福井県人でもないのに、胸の内に、懐かしさが広がっていくのを感じるのであった。
32歳の小幡さんの、滋味がひたひたと打ち寄せる、誠実な料理。
福井「緒ばた」にて。

















