回鍋肉と水煮魚。

食べ歩き ,

僕がキュレーターを務める、福井の食ツアー第三弾は、門上武司さんとの共同主催。

京都の名店中華「大鵬」出身の富士大介の店、「皇龍」で行われた。

各料理の中で、門上さんと僕が、特別に料理をリクエストして、二品作ってもらった。

門上さんのリクエストは「回鍋肉」。

だが「大鵬」でも出していた、四川料理の伝統的な「回鍋肉」の方である。

本来「回鍋肉」はキャベツは使わない。

葉ニンニクと一度茹でた豚肉を使った料理で、甜麺醤も使わず、豆板醤と豆豉(多分)で作る。

富士さんは、葉ニンニクが手に入らなかったので、オクラ、人参、春菊、にんじんの葉などを入れて作られた。

甘さが少ない分キリッとしていて、練れた豆板醤の旨味が生きている。

日本的「回鍋肉」は、大至急ご飯と愛なるが、これは紹興酒が飲みたくなる。

そして何より。春菊が豚肉と見事な脚葉があることを発見してしまった。

そして僕のリクエストは、「水煮魚」、古い四川料理「水煮牛肉」(本来は役牛を潰して塩煮にしていたという)の魚バージョンである。

こちらも昔は、水で川魚と唐辛子で煮込む素朴な料理だったが、1980年代に「水煮牛肉」からヒントを得た重慶の料理人が、花椒、唐辛子、豆板醤と、油をたっぷりと使った料理が話題となり今の形になったという

魚は三方五湖の雷魚を使われた。

「水煮魚」は何度もいただいたことあるが、雷魚は初めてである

四川省は海なし地方であるから、草魚や雷魚を使って作るのが正しい。

淡白で柔らかい雷魚の肉が、油の濃いコクと麻辣の中で穏やかな甘みを滲ませるのが、なんともいい。

激しい嵐の中に咲く一輪の白い花に似て。僕らの心を優しくさせるのだった。

全料理は別のコラムにて。