二子玉川の「TERAUCHI」。
400gの豚ステーキ。焼き牡蠣。白子のフライ! 茸のパスタ。牛レバーのステーキ。
めくるめく攻撃に、ただ笑うだけである。
なかでも痛烈は、「焼き野菜」と「チーズのパスタ」だった。
どの店でも見かけるパスタである。しかし。
チーズとクリームの旨味が一杯に膨らむのに、突出しない。
丸く、優しく、パスタの甘みと同化して、舌に広がり、胃の腑に落ちていく。
舌や、上顎を、いたわるような味わいが、心をいやす。
精妙に計算された チーズとクリーム、茹で湯の量が生んだ、簡潔の美がここにある。
和食で言われる引き算の美学が、静かに流れている。
眼力と技と勇気の賜物だ。
我々にできることといえば、「おいしい」と呟き、うっとりと虚空を見つめることしかない。
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