人形町「㐂寿司」

昔の仕事。

食べ歩き ,

才巻を茹でて、2つに割る。

エビのおぼろを挟み、丸く握る。

その姿が中国の子供の髪型に似ていたことから、「唐子漬け」と呼ばれた。

あるいは、唐傘に似ているからという説もある。

おぼろの甘みは優しく、エビの淡い甘みをそっと持ち上げる。

ヤリイカを茹で、生姜や胡麻、干瓢などを混ぜた酢飯を詰めて、ツメを引く。

「ヤリイカの印籠詰め」である。

茹でられて弾力を増したイカの食感と酢飯の出会いがいい。

素直なおいしさがある。

おぼろをかませ、コハダとエビを交互に巻く。

「手綱巻」である。

銀と淡赤の色合いが、目に映える。

エビ側から食べようか、コハダ側か。

あるいはエビとコハダの境目か。

エビを食べ、コハダを食べ、境目を食べた。

おぼろが酸味を和らげ、顔を崩す。

最後は「ひよっこ」である。

ゆで卵を作り、黄身とおぼろを混ぜて白身に戻す。

そうして酢飯と握る。

「ひよっこ」は半玉のことを表し、だからひよこではなくひよっこと呼ばれたという。

かつて花街であった「よし町」らしい呼び名である。

古き良き時代の手仕事が、ここにはまだ息づいている。

人形町「㐂寿司」にて。